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管理人のおすすめ読本 / ノンフィクション(戦記) ★★★★★ランキング

書籍タイトル リポート 表紙画像
彩雲のかなたへ
―海軍偵察隊戦記
(光人社NF文庫)

二式艦偵の知られざる武勲


著者は五期甲種飛行予科練習生で、開戦のときに実戦部隊に配属されています。
以後、巡洋艦「利根」でのソロモン海戦・南太平洋海戦等を零式水偵で参加、南太平洋海戦では空母「ホーネット」発見の打電に成功しています。
あ号作戦では二式艦偵でツラギを挺身定偵察の後、空母「サラトガ」を発見しています。

大戦末期には三四三空「奇兵隊」での本土防衛戦。
沖縄戦では中城湾強行偵察などなど、数多くの武勲を持つ偵察隊のエースともいえる経歴を持つ方です。

搭乗機も九四式水偵・九五式水偵・零式水偵・二式艦偵・彗星偵察機・彩雲偵察機と次々と新鋭機に搭乗しています。
二式艦偵にいたってはミッドウェー海戦に初投入されたことは知っていましたが、艦爆彗星の試験機程度にしか思っていませんでした。

二式艦偵と彗星偵察機がこんなに多く実戦配備されていたとは、この手記を読むまで知りませんでした。
これらの偵察機の活躍を知ることができる貴重な資料です。
開戦から終戦まで多数の重要な作戦に参加し、戦果を挙げて生き残った数少ない搭乗員の手記であり、偵察屋の実務を知る非常に内容の濃い一冊です。

著者はミッドウェー海戦直後に重巡洋艦「利根」配属を経験しており、利根四号機(甘利上飛曹)への批判に対して弁明をしています。
ミッドウェー付近は日付変更線に近いため、経度の読み方やコンパスの偏差の修正も大きく、航法には注意を要するにもかかわらず、三百浬進出と敵発見後の複雑な行動後にも無事帰艦しており、航法技術に問題は見当たらない。

米軍の資料によるとエンタープライズが利根四号機をレーダーで捕捉し、戦闘機に追跡を命じたが、これを巧みに避けて接触を続けたことを賞賛している。
甘利上飛曹は大戦末期にも日本近海にて空母発見を打電、その後消息不明となるも後日内地の浜に漂着するなど、立派な搭乗員であることを力説しています。

戦後の著者は海上自衛隊を経て、民間の道路建設の航空側量の仕事に従事するなど、平和事業にも貢献しておられます。
本書の最後は「二度と戦争をしてはいけない」という著者の願いで締めくくっています。

彩雲のかなたへ―海軍偵察隊戦記 (光人社NF文庫)
航空戦艦「伊勢」「日向」
―付・航空巡洋艦
(光人社NF文庫)

第1章は航空戦艦と航空巡洋艦の本来の構想について解説されています。
戦艦ネルソンとロドネーの設計者「ジョージ・E・サーストン」は、日本海軍がイギリスに発注した戦艦金剛の主任設計者であり、航空戦艦構想の発案者でもあります。
航空母艦の運用方針が確立できていない空母草創期に、サーストンが発表した最初の航空戦艦の解説からはじまります。
当時は複葉羽布張の、発艦距離も短い未成熟の航空機の時代であり、そのような時代だからこそ現実味のあった構想といえます。

第2章は航空戦艦伊勢・日向についての考察です。
伊勢・日向が航空戦艦に改装されたのは、空母不足と爆発事故が重なって実現された、いわば場当たり的な動機からともいえます。
このあたりは、新しい艦種として研究されていたサーストンの航空戦艦とはその構想に大きな違いがあるようです。
航空戦艦構想は草創期の空母の用兵思想とも大きく関わってくるため、最初の大型空母が巡洋艦級の主砲を備えていた理由や、装備の内容などが時代背景とともに紹介されています。

第3章は航空巡洋艦の発想と日本海軍の航空巡洋艦構想の考察です。
利根型航空巡洋艦・最上型航空巡洋艦・航空巡洋艦的軽巡「大淀」の用兵思想・開発経緯・装備・戦歴などが解説されています。
文庫本なので画像的には小さめですが、当時のモノクロ写真や二面図などのモノクロイラストも多数掲載されているので、艦型なども理解しやすい書籍です。

第4章は戦後に出現した航空巡洋艦の考察で、ソ連海軍のモスクワ級とキエフ級航空巡洋艦について解説されています。
結論はこれらの航空巡洋艦も、目立った功績もなく消え去ってしまったということ。

航空戦艦「伊勢」「日向」―付・航空巡洋艦
父、坂井三郎
-「大空のサムライ」が娘に遺した生き方-

これまで坂井三郎氏の著書は数多く拝読し、「大空のサムライ」は幾度となく読み返したものです。
本書は坂井三郎氏のお嬢様から見た、戦後日常生活の坂井三郎氏の姿が書かれており、非常に興味深く拝読いたしました。

常に近くで接していたお嬢様の観点で書かれているため、坂井三郎氏の行動や考え方が客観的に分析されており、非常にわかりやすく描かれています。
「今、何がなされるべきか」という基本的な教えについても触れられており、あらためて物事の基本についても考えさせられました。

「本書は、私と父の思い出話に過ぎませんが、日常の生活の中で、様々な創意工夫をして、毎日をより良く生きようとした坂井三郎の、情熱と気迫が、読者の皆様に少しでも伝わったでしょうか。」との、あとがきにもあるように、本当に現代の常人では思いもしないような「生きる」ために必要な教えが数多く紹介されています。
災害などの非常時にも役立つ心構えや工夫がそこにはあります。
坂井三郎氏が本当に言いたかったであろう事柄もお嬢様が代弁する形で紹介されています。

最後に坂井三郎ファンを魅了する各項目のタイトルをいくつか紹介します。
★「軍令ならば自分も投下していました」★婿、アメリカより来たる★書斎のコックピット★「七つ道具」の精鋭たち★自ら飛行機を降りた父★寿命の数しか桜は見られない★自分の怪我は自分で治す★娘の怪我も自分で治す★坂井式パチンコ必勝法★常に危険に備える極意★外に出る時、まず「上」を見ろ★娘に授けた短剣★物事の本質を理解せよ★ベテランは先を読む★今、何がなされるべきか★「行ってまいります」に心を込める★元士官達の不満★何もせずに平和を維持できるのか

父、坂井三郎-「大空のサムライ」が娘に遺した生き方
★大空のサムライ〈上〉
死闘の果てに悔いなし
(講談社プラスアルファ文庫)★
ノンフィクション戦記の聖書ともいえる一冊!
日中戦争の96艦戦の時代から、太平洋戦争の終戦まで生き残った歴戦の名パイロットの名著。
著者である坂井三郎氏の文章力や表現力は定評があり、実際に読んでいて非常にわかりやすく、現場にいるような臨場感を感じることができる。海兵団からラバウル・ソロモンでのエピソードなどは、当時の海軍やなまの航空戦の様子をうかがい知ることができる。
この「大空のサムライ」を読まずして零式艦上戦闘機は語れず、零式艦上戦闘機を知る上で坂井三郎氏の存在は不可欠なものであるといえる。
大空のサムライ
★先任将校
―軍艦名取短艇隊帰投せり
(光人社NF文庫)★
今は忘れられた、指導者・指揮官のあるべき姿を見ることができる一冊!
2等巡洋艦「名取」は、フィリピン沖300マイルの太平洋上で潜水艦からの魚雷攻撃で沈没。生き残った乗員195名は短艇に分乗し、生還するために必死の努力をかさねる。遭難中であっても軍規は堅くまもられ、先任将校の決断・号令によって集団は動いていく。その中で、多くの部下の命を左右する決断を下さなければならない先任将校の苦悩や、その鍛え抜かれた人間性、指揮官の3大要素としての、人物・技量・見識の3要素がなぜ必要かがよくわかる内容ではないか。
先任将校
★神龍特別攻撃隊
―潜水空母搭載「晴嵐」操縦員の手記
(光人社NF文庫)★
歴戦の水上機搭乗員の手記。
予科練習生として水上機操縦員となり、重巡「熊野」「利根」の水偵搭乗員をへてイ37潜の零式小型水偵に搭乗するなど、数々の作戦に参加したベテラン搭乗員の手記。
戦争末期にはその歴戦の腕を見込まれ、潜水空母と呼ばれたイ400潜水艦の特殊攻撃機「晴嵐」搭乗員としてウルシー泊地攻撃へ向かうも途中で終戦となり、無塗装ジュラルミン地の星マークの晴嵐は海中投棄され出撃する機会もなく復員する。
晴嵐の搭乗員が、艦攻乗りではなく水上機乗りが搭乗していたのに納得した次第です。
神龍特別攻撃隊
★私は玉砕しなかった
―グアムで投降した兵士の記録
(中公文庫)★
元朝日新聞記者の死後公開された人間味あふれる手記。
著者はグァム島での日本陸軍の総攻撃の前に米軍に投降した。
私(管理人)の父親は、昔話をするときによく「捕虜になったときに○○だった」というふうに話していた。
当時の私は中学生くらいの年齢だったが、「死して虜囚の辱めをうけず」という当時の教えを知っていたので、「オヤジは自ら死を選ばず捕虜になった卑怯者か」と複雑な心境になったことを覚えている。
しかし、満州で終戦になりその後捕虜としてシベリアへ送られたのだ、とは後日いろんな情報から知った次第である。
当時の幼い私の意識としては、その自決の善悪は別として「捕虜=死を選んだ仲間を裏切る行為」ではないか!と解釈していたような気がする。
しかし、自分がその立場になったときにどういう選択をするかと考えると、現在の価値観の自分では必ずしも死を選ぶとは言い切れないのも事実である。
映画「硫黄島からの手紙」を見たときに、西郷一等兵(二宮和也)の行動がこの著者の選択とシンクロした記憶がある。
場所こそ違えども、いろいろな葛藤や思いを経ての決断があったのであろうと考えさせられる一冊である。
公開されたのも著者の死後ということで、やはりご本人も複雑な思いが多々あったのであろうと推察されるが、ナマの戦場を知る上での貴重な資料であることは歴然とした事実である。
戦争や戦場というものを理解するためには、職業軍人の華々しい戦闘シーンだけではなく、著者のように徴兵された一人の人間のナマの声を知るのも大切なことであると思う。
私は玉砕しなかった





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